警察はいったい何をしているのだ。
神奈川県警の警察署が、運転免許更新で回収した失効免許証を警備公安部門に渡していたことが分かった。
過激派や右翼など公安活動の対象者の顔写真を集めるためだった。治安を守る公安活動は不可欠である。しかし、合法であることが前提だ。
免許証の写真は免許行政のために集められたものだ。対象者か否かを問わず一律に警備部門へ渡す行為は、個人情報保護法に抵触する疑いが強い。
警察庁が全国調査に乗り出したのは当然である。
公安活動はきれいごとだけでは済まない。厳しい局面もあろう。それでも警察は法令を守った上で国民の信頼に応えなければならない。
それなのに、発覚の契機となった県警保土ケ谷署警備課の男性巡査長の振る舞いはどうだ。飲酒後、失効免許証31枚を入れたリュックサックを駅に置き忘れた。職務に対する緊張感はかけらも感じられない。長年の慣行の中で、組織全体の規範意識が鈍っていなかったか。
この不祥事が重大なのは、警察の新たな活動手法への理解まで損ないかねないことだ。
匿名・流動型犯罪グループ(匿流(トクリュウ))の特殊詐欺や闇バイト事件が深刻化する中、被害防止のため、匿流関係者のスマートフォンを秘密裏に遠隔解析できる法案が国会提出された。
本人の知らぬ間に警察が情報を得る点で、今回の流用問題と共通する。国民が個々の警察活動を直接確かめるのは難しい。だからこそ警察の適法な運用と厳格な統制が欠かせない。
スマホ遠隔解析は犯罪被害を防ぐ有効手段となり得る。防犯カメラのように実績を積み、適正運用を示すことで、国民の理解と支持を得ていくべきだ。
今回の免許証流用はその信頼の土台を壊す。県警では30年以上前から複数の署で不適正な流用が続いていたとされる。警察は経緯と組織責任を徹底的に調べ、不適切に入手した情報を消去し、国民に謝罪しなければいけない。
警察への信頼が損なわれれば、匿流から守られるべき国民の利益も損なわれる。
国民の生命と財産を守るスマホ遠隔解析という新手法の導入を、ほかならぬ警察自身が邪魔してはならない。




