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黄竜

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黄竜
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瑠璃の影壁「九龍壁」の黄竜(中国・大同)
各種表記
繁体字 黃龍
簡体字 黄龙
拼音 Huánglóng
発音: ファンロン
ホワンロン
日本語読み: こうりゅう
おうりゅう
英文 Huanglong / Yellow Dragon
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黄竜(こうりゅう繁体字: 黃龍; 簡体字: 黄龙; 拼音: Huánglóng; イェール式広東語: Wong4 Lung4、ファンロン; ベトナム語:Hoàng Long、ホアン・ロン)は、中国の伝承五行思想に現れる黄色黄金に輝く竜であると言う異説もある。

四神の中心的存在、または、四神の長とも呼ばれている。四神が西の守護獣なのに対し、中央を守るとされる。五行説で黄は土行であり、土行に割り当てられた方角は中央である。同様に四神はを表すものでもあり、黄竜はそれぞれの土用を表すとされている。土竜の姿を持つ応竜と混同されている[1]

中国では瑞獣の出現を記念して改元を行うことがあるが、黄竜が出現したというので「黄龍」と改元されたこともあった。日本でも黄竜はめでたい獣とされ、宇多天皇887年即位)のときに黄竜が出現したといわれている。

黄竜は皇帝の権威を象徴する竜とされたが、後に麒麟と置き換えられたり、同一視されるようになった。黄竜と麒麟は中央を守る神獣として、紫微垣において皇帝の後宮の妃を司る星官・勾陳(こうちん)と対応する[2][3]

『瑞応記』では「黄龍者 神之精 四龍之長」などと四竜の長とされる[4]。『芸文類聚』には『瑞応図』[5]からの引用として「黄龍者 四龍之長」と記されている[6]。四竜とは蒼竜(青竜)、赤竜(紅竜)、白竜黒竜のこと。

伝承

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黄帝陵景区の黄竜(中国・延安)

史記』封禅書によれば、黄帝の治世の末期、彼が荊山の下、鼎湖の上に訪れた時、天界から竜がを垂らし、黄帝を昇天へと迎えた。しかし、七十余人の臣下が竜の髭にすがると、それは切れて黄帝の弓もろとも落下。昇天できなかった人々は、神弓と竜髭を抱えて泣いた[7]。この天上の竜は、道教において黄竜とされる[8]

儒教神秘主義学説・讖緯では、黄河の魚[9]あるいは黄竜[10]が黄帝に祥瑞の至宝・河図(かと)を授かったとされる。また、伏羲が黄河の竜馬(りゅうま)[11]から得た「龍図」は、これと同一視される。

異説では、黄竜は天帝の子・(こん)の化身とされる。黄河の大洪水の時代、鯀は天界の神土・息壤(しくじょう)を盗み、洪水を阻塞しようとしたが失敗。火の神・祝融(しゅくゆう)が天帝の命を受け、羽山で鯀を処刑した。死後の鯀は奇跡的にの聖王・を産み、その遺体は三年間腐らず、最終的に黄竜[12]もしくは黄熊(おうゆう)[13]あるいは魚[14]へと変化し、深淵に沈んだという。

その後、黄竜は禹王の治水を助け、尾で地を削り、川を導いた[15]。この伝承における黄竜は、応竜あるいは神竜(しんりゅう)とも記される[16]

体系

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四神の長

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淮南子』天文訓において、黄竜は黄帝の神獣とされ、青龍・白虎・朱雀・玄武といった天之四霊の中心に位置する[17]

五方 五行 五帝 五佐 五星 五獣 五音
太昊 句芒 歳星 蒼竜
炎帝 朱明 熒惑 朱鳥
黄帝 后土 鎮星 黄竜
西 少昊 蓐收 太白 白虎
顓頊 玄冥 辰星 玄武

四竜の長

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道教経典『太上洞淵神咒経』には、青帝青竜王・赤帝赤竜王・白帝白竜王・黒帝黒竜王・黄帝黄竜王が収録されている[18]。日本の陰陽道は道教の神名を取り入れ、『簠簋内伝』において五帝竜王を盤古の五子と設定した。

国家の祭祀体系において、皇帝より与えられた封号は、青竜広仁王・赤竜嘉沢王・白竜義済王・玄竜霊沢王・黄竜孚応王であり、「五龍廟」と称される霊廟にて祭られる。

元号

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脚注

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  1. 『山海経』大荒北経「有山名曰凶犁土丘。応竜處南極。殺蚩尤與夸父、不得復上。故下數旱、旱而為応竜之狀、乃得大雨」郭璞注「今之土竜本此。気応自然冥感、非人所能為也」
  2. 『荊州占』「勾陳、天子大司馬、勾陳者、黄竜之位也」
  3. 『易冒』「勾陳之象、実名麒麟、位居中央、権司戊日」
  4. 『瑞応図』「黄竜者、四竜之長、四方之正色神霊之精也」
  5. 隋書・経籍志』に『瑞応図』という典籍が挙げられている(ウィキソース出典  (中国語) 隋書/卷34, ウィキソースより閲覧。)。
  6. ウィキソース出典  (中国語) 藝文類聚/卷098, ウィキソースより閲覧。
  7. 史記』封禅書「黄帝采首山銅、鑄鼎於荆山下。鼎既成、有竜垂胡髯下迎黄帝。黄帝上騎、群臣後宮從上者七十餘人、竜乃上去。余小臣不得上、乃悉持竜髯、竜髯拔墮、墮帝之弓、百姓仰望。帝既上、乃抱其弓與竜髯而号。」
  8. 雲笈七籤』九天玄女伝「然後採首山之銅、鑄鼎於荊山之下、黃竜下迎、帝乘竜升天」
  9. 『河図挺佐輔』「黄帝遊於河洛之間、至鴻澤之泉、鱸魚負図以授帝」
  10. 『竜魚河図』「天授元始、建帝号、黄竜負図、従河中出、付黄帝、帝令侍臣写以示天下」
  11. 『尚書中候』「伏羲氏有天下、竜馬負図出於河、遂法之畫八卦」
  12. 帰蔵』啓筮「鯀死三歳不腐、剖之以呉刀、化為黄竜也」
  13. 『国語』晋語八「昔者鯀違帝命、殛之于羽山、化為黄熊、以入于羽淵」
  14. 拾遺記』「鯀自沉於羽淵、化為玄魚、時揚鬚振鱗、橫脩波之上、見者謂為河精」
  15. 拾遺記』「禹尽力溝洫、導川夷岳、黄竜曳尾於前、玄龜負青泥於後」
  16. 楚辞』天問「応竜何畫?河海何歷?」王逸注「或曰禹治洪水時、有神竜以尾畫地、導水徑所當決者、因而治之」
  17. 『淮南子』天文訓「何謂五星?東方、木也、其帝太昊、其佐勾芒、執規而治春。其神為歳星、其獣蒼竜、其音角、其日甲乙。南方、火也、其帝炎帝、其佐朱明、執衡而治夏。其神為熒惑、其獣朱鳥、其音徴、其日丙丁。中央、土也、其帝黄帝、其佐后土、執繩而制四方。其神為鎮星、其獣黄竜、其音宮、其日戊己。西方、金也、其帝少昊、其佐蓐收、執矩而治秋。其神為太白、其獣白虎、其音商、其日庚辛。北方、水也、其帝颛頊、其佐玄冥、執権而治冬。其神為辰星、其獣玄武、其音羽、其日壬癸」
  18. 『太上洞淵神咒経』卷十三 竜王品 太上洞淵召諸天竜王微妙上品