連載
土記
科学取材の経験が豊富な青野由利専門編集委員のコラム。
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科学か価値判断か=青野由利
2022/3/19 02:00 1001文字<do-ki> 「最初に指摘したいのは、それは科学の問題ではなく、価値の問題だということです」 米ハーバード大の疫学者、ビル・ハネージさんの言葉に「だから難しいんですよね」と思った。 米ニューヨーク・タイムズ紙が先週、ツイッターを使って開いた新型コロナとの「共存」をテーマにしたQ&Aイベント。 「
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理不尽に奪わないで=青野由利
2022/3/12 02:04 991文字<do-ki> 福島で原発過酷事故が起きた11年前、原稿を書く手が震えたことを忘れたわけではない。 原子炉の空だき、吹き飛ぶ原子炉建屋、放射性物質の環境への大量放出。ありえない、と思う出来事の連続に緊張は極限状態だった。 だが、白状すれば、その緊張感は年月とともに緩んだ。 その緩みに蹴りを入れたの
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戦時下の核の危うさ=青野由利
2022/3/5 02:01 988文字<do-ki> ウクライナへの軍事侵攻という暴挙の中で高まる核の危険性に慄然(りつぜん)とする。 ひとつはロシアのプーチン大統領がちらつかせた核兵器使用の脅し。核戦力を持つ部隊の「特別態勢」が何を意味するかはわからないが、「本当に使う気はない」と楽観してはいけないだろう。 そう感じるのは、つい先日
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超新星アラート=青野由利
2022/2/26 02:02 995文字<do-ki> あれからもう35年、と思うと感慨深い。 1987年2月23日。私たちの銀河系に隣接する大マゼラン星雲に超新星が出現した。 恒星が進化の果てに起こす大爆発。銀河系内や隣接銀河で起きれば肉眼でも見える。直近はへびつかい座に出現した1604年の「ケプラーの超新星」。380年ぶりとあって大
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ウイルスはまだ不安定=青野由利
2022/2/19 02:00 992文字<do-ki> 新型コロナのウイルスはまだ変化が進行中で不安定。政府分科会の尾身茂さんがそんなことを言っていた。 どういうこと? 感染症制御が専門の押谷仁さんに聞くと「そもそも安定している季節性インフルエンザと比較することに無理があるんです」。 インフルエンザウイルスは数十年に1回遺伝子が大きく変
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マスクをめぐって=青野由利
2022/2/12 02:01 990文字<do-ki> 北京冬季オリンピックを眺めていると、選手も関係者も、みんな高機能マスクをつけているように見える。 念のため国際オリンピック委員会(IOC)の規則集「プレーブック」を見ると、確かに「KN95、N95、FFP2、もしくはそれと同等の防護効果のあるマスク」と規定されている。 N95は粒子
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ハルティンの冒険=青野由利
2022/2/5 02:00 1021文字<do-ki> 先月末、病理学者のヨハン・ハルティンさんが米カリフォルニア州の自宅で亡くなった。97歳。 「誰?」と思うかもしれないが、私にとっては十数年前にやりとりした忘れられない科学者だ。 ニューヨーク・タイムズ紙の科学記者ジーナ・コラータさんが書いた訃報のタイトルは「1918年のウイルスの凍
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オミクロンはどこから=青野由利
2022/1/29 02:00 963文字<do-ki> 瞬く間に広がった新型コロナのオミクロン株。いつ誰が感染してもおかしくないと肌で感じている人は多いだろう。 このウイルス、非常に変異が多く、性質もこれまでの変異株とは様相が違う。元をただせばどこからやってきたのか。 まず、おさえておかねばならないのはオミクロン株はデルタ株やアルファ株
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火山噴火と気象津波=青野由利
2022/1/22 02:00 987文字<do-ki> トンガの海底火山フンガ・トンガ・フンガ・ハアパイの大噴火は、なぜ日本に思いがけない「津波」をもたらしたのか。 海洋力学の専門家である東京大の日比谷紀之さんが、長崎湾で発生する「あびき」に似たメカニズムだとコメントしていた。 冬から春先にかけて前触れなく海面が上下する現象で、船の転覆
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オミクロン株の手ごわさ=青野由利
2022/1/15 02:01 975文字<do-ki> 大型ダンプカーから外れたタイヤがころがり歩行者を不意に襲う。聞くだに恐ろしい話だ。 被害者の男性は救急搬送され、命を救われたが、もし、新型コロナで病床が逼迫(ひっぱく)していたら? たらい回しにあったとしたら、これまた恐ろしい話だ。 オミクロン株の急速な感染拡大は予想された通りだ。
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海図150周年=青野由利
2022/1/8 02:02 991文字<do-ki> 今年いただいた年賀状に日本近海の海底地形図の絵はがきがあった。列島に沿った海溝や海底火山の連なりがよくわかり、「海図150周年記念」とある。 調べてみると、明治政府が近代的な海図作製を始めたのが1871年。日本が自力で作製した最初の海図「陸中國釜石港之図」が刊行されたのが翌72年。
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もしサンタクロースが=青野由利
2021/12/25 02:00 992文字<do-ki> もしサンタクロースがクリスマスイブにインフルエンザにかかっていたら? 子どもたちにプレゼントを届けることでどれだけ感染が広がるだろうか。 新型コロナの存在がまだわかっていない2年前の12月、ちょっとおちゃめなシミュレーションが豪医師会の専門誌に掲載された。 著者は感染症学が専門の古
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免疫に期待はあれど=青野由利
2021/12/18 02:00 975文字<do-ki> 学生のころ「これだけは専門にしたくない」と思った分野がいくつかある。一つが免疫だ。 なぜなら、あまりに複雑で、頭がクラクラするから。 でも、裏を返せば、それほど巧妙な仕組みで私たちの体を外敵から守ってくれている、ということでもある。 その免疫が新型コロナウイルス禍のおかげで毎日のよ
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「日本式」の匂いで=青野由利
2021/12/11 02:01 978文字<do-ki> 「バラ、レモン、ユーカリ、クローブ」。聞いただけで、なんだかうっとりしてしまう香りの組み合わせだが、何だと思います? 実は、嗅覚障害の治療法の一つとして使われる匂いなのだそうだ。先日、東大病院耳鼻咽喉(いんこう)科の近藤健二さんの話で学んだ。 開発したのは独ドレスデン工科大・耳鼻咽
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誰もが安全になるまで=青野由利
2021/12/4 02:01 1004文字<do-ki> やはり新型コロナウイルスは手ごわい。デルタ株とのつきあい方がなんとかみえてきたかと思ったら、今度はオミクロン株。 これまでさんざんな目にあった各国が一斉に渡航制限をかけるのは無理もない、と思っていた。 でも、NPO法人「アフリカ日本協議会」の稲場雅紀さんの次のような言葉を聞き、はっ
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追加接種の狙いは?=青野由利
2021/11/27 02:00 995文字<do-ki> 新型コロナウイルスに対する免疫が気にかかる。 ワクチン接種による抗体がどの程度維持されているのか。日本人のどれぐらいが自然感染による抗体を持っているのか。 これらは、今後の感染状況や追加接種のあり方、みんなが不思議に思っている感染の急減を考える上でも鍵となるからだ。 ワクチンを2回
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軽石に学ぶ火山国=青野由利
2021/11/20 02:02 974文字<do-ki> ガーデニングをする人には赤玉土や鹿沼土はおなじみだろう。植物によって使い分けられ、「サツキやツツジは鹿沼土」などといわれる。 これまで、その由来を考えてみたことがなかったが、福徳岡ノ場の噴火による軽石の漂着をきっかけに知り、不覚にも驚いた。 鹿沼土は元をただせば数万年前の群馬県・赤
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2人のジェームズ=青野由利
2021/11/13 02:02 989文字<do-ki> 2週間前、英グラスゴーで国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開幕した時、議長国のボリス・ジョンソン首相が2人のジェームズを持ち出した。 1人はジェームズ・ボンド。いったいなぜ?と思ったが、ボンドのルーツはグラスゴーがあるスコットランドらしい。しかも、初代ボンド役
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牙のないゾウの進化=青野由利
2021/11/6 02:00 991文字<do-ki> 学術論文の成果なのに、読んでいて胸が詰まった。 ゾウの密猟が牙のないアフリカゾウの急速な進化を促した、という話。米英チームの研究で、先月、米サイエンス誌に掲載された。 現場はアフリカ南東部のモザンビーク。1977~92年の15年間にわたり内戦が続き、戦闘資金調達のため象牙の密猟が横
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日本では暮らせない=青野由利
2021/10/30 02:01 982文字<do-ki> 世代も背景もまったく違う2人が、「日本では暮らせない」と胸の内を話したのが気にかかった。 1人は今年のノーベル物理学賞受賞者で米国籍の真鍋淑郎さん。常に協調性が求められる日本より、人を気にせず自由に研究できる米国が性に合う、と語っていた。 そしてもう1人は小室圭さんとの結婚への強い
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