うまく回すの、やめました。── 会議を「話す場」から「つくる場」へ
こんにちは、CXS(Culture eXperience Supporting)DivisionのTatsu.です。私たちはLINEヤフーのデザインカルチャーを発展させ、より良いモノづくり環境を整える“DesignOps(Design Operations)”の領域を担当しています。
DesignOpsという役割を担っていると、つい新しいツールの導入や革新的なプロセス改善などに目が向きがちです。しかし、日々向き合う中で痛感するのは、「会議の質」や「意思決定のプロセス」といった、地道でありながら根幹となる部分を整えることの重要性です。会議という“場”の質は、組織のアウトプットの質に必ず響いてきます。
そんな中で私自身、ファシリテーターとして「自分がうまく回さなきゃ」と思えば思うほど空回りし、結局は無難で当たり障りのない結論に落ち着いてしまう……という壁にぶつかっていました。
そして試行錯誤の末に行き着いたのが、今回ご紹介する会議設計の考え方です。
「会議にはアジェンダが必要で、終了後には成果があるべき。」これはビジネスの基本であり、あまりに「当たり前」のことかもしれません。
しかし、あなたが参加する会議では、その“当たり前”が、誰が主催しても、毎回確実に起きていますか?
本記事では、正論としては分かっている「当たり前」を、再現性を持って引き起こすための“構造の設計”について共有します。少しマニアックな内容になりますが、お付き合いください。
参加者の納得感に表れた「構造」の手応え
具体的な設計の話の前に、効果を先にお見せします。これから紹介する設計思想で進行した会議後の参加者へのアンケートで、以下のような結果が得られました。

会議での成果物の有益性:92%が肯定的な回答
自分の考えが成果物に影響している感覚:83%が肯定的な回答
特筆すべきは、参加者の多くが「自分の考えが最終的なアウトプットに影響を与えている」と実感しながら、同時に「会議での成果物の有益性」スコアの高さから、組織としての最適解に辿り着けていると言える点です。
なぜ、属人的なファシリテーションスキルに頼らずに、このような結果が生まれたのか。その鍵は、アジェンダを「成果物」と「プロセス」の二層に分けて設計したことにあります。
会議は「話す場」ではなく「つくる場」
まず、私は会議の定義をこのように捉え直しました。会議は、話し合う場ではなく、成果物をつくる場。
ここでいう成果物とは、完成品ではありません。
判断するための情報整理
前提条件の一覧
論点の構造図 など
次に進むための“足場”です。最初に決めるのは、ただ一つ。
「今日は何をつくるのか?」
これだけで、会議のゴールがはっきりします。
アジェンダを二つに分ける
これまでの会議では、「〇〇について」という“議題”だけをポンと置いたアジェンダが一般的でした。しかし、これでは「何をどこまで話せば終わりなのか」が曖昧なまま議論がスタートしてしまいます。その結果、ファシリテーターがその場の空気を読んで必死に「うまく回す」ことでしか着地点を見出せませんでした。
そこで私は、アジェンダの役割を「成果物アジェンダ(Artifact Agenda)」と「プロセスアジェンダ(Process Agenda)」の2つに明確に分割することにしました。

成果物アジェンダは「今日完成させるべき成果物」を、
プロセスアジェンダは「どう考え、成果物に向かうか」を設計するものです。
もう一つの特徴として、プロセスアジェンダは 問いを中心に設計します。
参加者の創造性を引き出す問いにするのか。よりビジネス寄りに、判断に近づける問いにするのか。問いの質を変えることで、場の思考の質を設計できます。進め方は難しくありません。
本日のゴール(成果物アジェンダ)を提示
問い(プロセスアジェンダ)を提示
まず一人で考えて書く
他者の考えを並べる
束ねて、構造化する
成果物にまとめる
意図しているのは、説明・主張・押し合いで進めないこと。
思考を、
「問い → 構造化 → 成果物」
へ変換することです。
この設計にすると、いくつかの変化が起きます。
発言量ではなく、思考量が反映される
ファシリテーションが個人の力量に依存しにくくなる
確実に前に進む会議になる
この構造の変化こそが、会議を「うまく回さなければならない場(属人的)」から、「当たり前に成果が出る場(構造的)」へと変える鍵になります。プロセスそのものの上手い・下手は問いません。問いと構造を通して、ちゃんと成果に変換できたか。それだけを見ます。

会議設計の一例
ここで、実際の会議設計の一例を紹介します。
成果物アジェンダ
最終的な成果物は、
来期のデザイン組織の主要な提供機能 3〜5項目
を明文化すること。あらかじめ、機能名・提供価値・注力度(◎/◯/△)を記入するフォーマットを用意します。
例)

プロセスアジェンダ(問いの設計)
問いを中心に、個人で考える時間を取ります。
自分が関わっている仕事の中で、「この組織がやる必要がある/求められている」と思える案件は何か?その理由は何か?
本来やるべきだが、まだ着手できていない役割は何か?
などなど、まずは1問ずつ個人で書き出していきます。質問の内容や個数は当日の場の雰囲気をみながら調整していきます。
その後、
全体で整理し、提供すべき機能を束ねる
整理した機能ごとに「提供価値」「役割名」「力の入れ方」を決める
という流れで構造化していきます。
最後の確認
最後に確認するのは、最初に決めた成果物アジェンダがきちんと埋まっているかどうかです。あらかじめ用意したフォーマットが完成していれば、会議は完了です。
このように、
目的は明確に定義する
プロセスは問いで設計する
最後は成果物で判断する
という流れにしておくことで、議論の盛り上がりに左右されず、必ず形が残ります。
この設計の最大のメリット
最大のメリットは、再現性です。
うまく回せるかどうかに頼らなくてよくなる、という意味での再現性です。まとめが、ファシリテーターの腕に依存しにくい。うまくさばかなくてもいい。構造が前に進めてくれます。
発言量ではなく、思考量が反映される。毎回、ちゃんと何かが残る。
それがこの設計の一番の価値です。
「今日はどう転ぶんだろう」という不安が、「この設計なら前に進む」という確信に変わりました。
もちろん、弱いところもある
万能ではありません。
この設計が向いていない場面もあります。
関係性づくりそのものが目的の場
とにかく自由に発散したい初期フェーズ
感情の共有や合意形成そのものがゴールの場
この設計は、「整理」や「判断」に強い設計です。
だからこそ、発散や関係性構築を主目的とする場では、あえて別の設計を選ぶほうがよい場合もあります。
でも、目的がはっきりしている会議では、安定して成果物を残すことができます。
当たり前を、当たり前に起こす
やっていることは、本当に当たり前です。
何をつくるかを決める。
個人の考えを出す。
構造にまとめる。
次に進める形にする。
仕事をする上で、会議をする上で、本来は自然に起きてほしいことです。
それでも現実では、当たり前が安定して起きない。
しかしこれは、当たり前の成果を、当たり前に起こせるようにするための設計です。
成果物アジェンダとプロセスアジェンダを分けて設計する。
会議をうまく回すことを目標にするのではなく、成果が自然と残る構造を用意する。
それが、「うまく回すの、やめました」という決断の正体です。「自分がなんとかしなきゃ」という属人的なプレッシャーを手放し、成果が自然と生まれる「構造」に委ねる。 アジェンダを二層に分けるというシンプルな工夫が、会議をただの「話し合い」から、確実な「前進」へと変えてくれました。
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