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赤信号みんなで渡れば怖くない

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

赤信号みんなで渡れば怖くない(あかしんごうみんなでわたればこわくない)は、「おおぜいでやれば、悪いことでも堂々とできるものだ。」という集団心理を表す言葉[1]

漫才コンビ「ツービート」のギャグ元ネタとなっている。「真理をつく表現は、時代を追うごとに市民権を得ていき」と朝日新聞が評したように[1]岩波新書発行の『ことわざの知恵』にも掲載される[2]など、ことわざとして認識されるようになっていった。三省堂国語辞典ではそれまで「ギャグは国語辞典には載せない」という方針だったが、ギャグが使い始められてから約40年経って、第八版に収録された[1]

なお、書籍『ツービートのわッ毒ガスだ』では、このギャグを「赤信号 みんなでわたればこわくない」(「赤信号」以外がすべて平仮名)と表記している[3]

概要

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禁止をされているような事柄でも、集団で行うならば心理的な抵抗もなく行うことができるようになるということを意味する[4]

人間が議論などをしている場合に、それが集団になったならば、よりリスクの高いような決断をしがちであるという心理があり、「赤信号みんなで渡れば怖くない」という状態になるのである。場の雰囲気に流されて極端な判断をしやすくなっているのである。現代のインターネット匿名掲示板などで、不特定多数の投稿によって炎上しているというのは、この言葉の表す状態である[5]

このような原因としては、集団になっているということで匿名性が高まっているという仮説がある。人間というのは不特定多数の中に混じれば、一個人としての責任などの社会的なモラルが低下しがちなためである。少数の人間が互いの顔が見える場での発言となれば誰が言ったということが特定できるために慎重になる。対してインターネットで多くの人が発言する場では、普段は行われないような過激な発言でも、言っても良いだろうと思って無責任にされるようになるというものである[6]

幼い頃からこのようなことをしてはいけないとしつけられ、このようなことをするのに恥ずかしさと後ろめたさを持っているような人でも、他の人がこのようなことをしていて、しかもそれが正当化されているならば、「赤信号みんなで渡れば怖くない」という心理が働き、他の人がこのようなことをしているというのを口実として、自らも心理的な抵抗を無しにこのようなことをするようになるのである。この場合にはその行動を行っているのが大勢であり手厳しいほど心理的な抵抗が小さくなっていくのである[7]

「赤信号みんなで渡れば怖くない」というのは、日本人国民性を表した言葉でもある。日本人というのは、みんながやっていたり、普通であったり、当たり前であったりするようなことに流されやすい傾向がある。日本人の相手に対しての行動を促す場合には、みんながそれを行っているということを理由として促した場合には、相手がそれを行うようになりがちである。みんなはやっているのにあなたはやらないのですかという空気を作り出したならば、やっていない自分の方がおかしいのかもしれないという心理が働きがちなのである[8]

似たような意味のことわざに「人衆ければ天に勝つ(ひとおおければてんにかつ)」がある[9]

事例

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令和6年12月に東洋大学が実施した新方式の入試方式が、文科省が公表する「大学入学者選抜実施要項」に違反しており、「ルール違反である」旨の通告を文部科学省から受けた。同年10月時点で、文科省から注意を受けていたにもかかわらず、当該の入試を実施しており、その後、文科省より再度、警告を受けた。その際に東洋大学側は「(関西を中心に)他の大学も行っているのに、なぜうちだけ」と回答しており、ルール違反であることを認識していながら、他の大学も行っているからという理由で、禁止されている事項を行っており、これらの流れを「赤信号みんなで渡れば怖くない」と表した関係者もいた[10][11][12]

脚注

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  1. 1 2 3 「エモい」は「あはれ」の子孫です…命削って作った三省堂国語辞典、始まって以来の大改訂」『読売新聞』2021年12月31日。2023年7月14日閲覧。
  2. 【三山春秋】『ことわざの知恵』(岩波書店辞典編集部編)に、ことわざと呼ぶには…”. 上毛新聞 (2013年8月27日). 2026年1月20日閲覧。
  3. ツービート『ツービートのわッ毒ガスだ―ただ今、バカウケの本』ベストセラーズ(ワニの本)、1980年、2-3頁。
  4. 「赤信号みんなで渡れば怖くない(あかしんごうみんなでわたればこわくない)」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書”. www.weblio.jp. 2024年1月13日閲覧。
  5. 小日向るり子. 危険な集団心理? 「リスキーシフト」の意味とは”. 「マイナビウーマン」. 2024年1月13日閲覧。
  6. 実は怖い。「赤信号みんなで渡れば怖くない」理論(マイナビウーマン)”. LINE NEWS. 2024年1月14日閲覧。
  7. 「なんでオレの年金がこんなに少ないんだ」年金事務所に怒鳴り込んでくる高齢者の"被害者意識"の心理構造 他人に責任転嫁する"自己正当化人間"が増えている (4ページ目)”. PRESIDENT Online(プレジデントオンライン) (2023年2月3日). 2024年1月14日閲覧。
  8. 【精神科医が教える】人を騙そうとする「ブラック心理術」”. ダイヤモンド・オンライン (2022年2月17日). 2024年1月14日閲覧。
  9. 日本国語大辞典, デジタル大辞泉,精選版. 人衆ければ天に勝つ(ヒトオオケレバテンニカツ)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2025年12月17日閲覧。
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