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三ノ鼓

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

三ノ鼓(さんのつづみ)は、雅楽で用いられる打楽器の一種である[1]三の鼓三鼓とも表記される。胴の中央がくびれた砂時計形の締太鼓で、古代に日本へ伝来した細腰鼓の一種に位置づけられる[2][3]。現行の雅楽では、主に高麗楽に用いられ、唐楽における羯鼓に相当する役割を担う[2][4]

概要

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三ノ鼓は、胴の中央がくびれた砂時計形の両面太鼓である。胴の両側に革を当て、調緒で締める構造を持つ。胴の長さを約45センチメートル、革面の直径を約42センチメートル前後とされる[2]

演奏時には、床または台の上に横たえて置き、左手で調緒を押さえ、右手に持ったで右側の革面を打つ[2][4]

日本の雅楽では、奈良時代に伝来した壱鼓二鼓、三鼓を総じて古楽鼓という。三ノ鼓はこのうち最大のものとされ、平安時代以後は朝鮮半島系の音楽をもととする右方舞の高麗楽に用いられるようになった[2]。現行雅楽では、高麗楽の合奏において、曲の流れや終止を導く打楽器として伝承されている[2][4]

羯鼓と同じく雅楽の合奏を統率する打楽器であるが、構造と奏法には違いがある。羯鼓は台に置かれ、両手の撥で両面を打つのに対し、三ノ鼓は横に置いて右手の撥で片面を打つ[4]

奏法と打音

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三ノ鼓の演奏においては、左手で調緒を握って鼓本体を固定して、右手の撥で右側の革面を打つことを基本とする[2]

三ノ鼓の打音には、短めの音と長めの音があり、打音に合わせて唱歌で「テン」「テエーン」と唱えられる[2][4]。短めの音と長めの音の2種類を組み合わせて、高麗四拍子、揚拍子、唐拍子と呼ばれる高麗楽の基本的な拍子が表現される[2]

三ノ鼓の奏法は、羯鼓と同じく合奏を統率しながらも、打音の種類や音色の面で異なる特徴を持つ[2][4]

役割

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三ノ鼓は高麗楽の合奏において、演奏全体の進行に関わる打楽器である[4]。雅楽では指揮者を置かないため、羯鼓や三ノ鼓の奏者が曲の速度や終止の合図、全体統率に関わる。このため、現代の演奏においては楽団長などのベテランが受け持つものとされている[5]

羯鼓が唐楽系の舞楽と管絃に用いられるのに対し、三ノ鼓は高麗楽に用いられる[4]。両者はいずれも合奏の流れをつかさどる楽器であるが、三ノ鼓は高麗楽において、高麗笛とともに中心的な役割を果たす楽器である[3]

歴史

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三ノ鼓は、奈良時代に唐楽の楽器として、壱鼓、二鼓とともに日本へ伝来したとされる[2]。これらの鼓は三種を総称して古楽鼓と呼ばれ、古代に伝来した細腰鼓類の一群に位置づけられる[2]

平安時代以後、三ノ鼓は高麗楽専用の楽器となったとされる[2]。唐楽では羯鼓が演奏の進行を担うのに対し、高麗楽では三ノ鼓がこれに相当する役割を担うようになった[2][4]

細腰鼓としての位置づけ

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細腰鼓の体系では、壱鼓、二鼓、四鼓と並ぶ鼓類の一つである[3]。壱鼓は細腰鼓の最小のものとされ、二鼓は壱鼓より大きく三鼓より小さい楽器とされる[6][7]。四鼓は三鼓より大きいものとされるが、現在は伝存しない打楽器とされる[8]

「三の鼓」「三鼓」とも表記されるが[2]、「三鼓」という語は文脈によって雅楽の三種の打楽器、すなわち羯鼓、太鼓、鉦鼓を指すこともある[9]

関連する楽器

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三ノ鼓と関係する楽器には、羯鼓、太鼓、鉦鼓、壱鼓、二鼓、四鼓などがある。羯鼓は唐楽系の舞楽と管絃に用いられ、三ノ鼓は高麗楽に用いられる[4]。羯鼓は唐楽系の舞楽と管絃に用いられ、三ノ鼓は高麗楽に用いられる[4]

細腰鼓類としては、壱鼓、二鼓、三鼓、四鼓の区分があり、三ノ鼓はその中で現行雅楽に残る代表的な楽器である[3]

脚注

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  1. 遠藤徹・笹本武志・宮丸直子『図説 雅楽入門事典』柏書房、2006年、168頁。
  2. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 三の鼓”. コトバンク. 株式会社ビジネスアーキテクト. 2026年5月16日閲覧。
  3. 1 2 3 4 楽器図鑑 三ノ鼓”. 文化デジタルライブラリー. 日本芸術文化振興会. 2026年5月16日閲覧。
  4. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 鞨鼓/三ノ鼓”. 文化デジタルライブラリー. 日本芸術文化振興会. 2026年5月16日閲覧。
  5. 雅楽の楽器”. 日本雅樂會. 日本雅樂會. 2026年5月16日閲覧。
  6. 壱鼓”. コトバンク. 株式会社ビジネスアーキテクト. 2026年5月16日閲覧。
  7. 二の鼓”. コトバンク. 株式会社ビジネスアーキテクト. 2026年5月16日閲覧。
  8. 四の鼓”. コトバンク. 株式会社ビジネスアーキテクト. 2026年5月16日閲覧。
  9. 三鼓”. コトバンク. 株式会社ビジネスアーキテクト. 2026年5月16日閲覧。

関連項目

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